こむら返りを考える
夜中、睡眠中にふくらはぎがつって痛みで目が覚めたという経験はありませんか?
こむら(腓)返りは、ふくらはぎの腓腹筋に起こる痛みを伴うけいれんです。「足がつる」ともいいますが、ふくらはぎ以外に足の指や足裏の筋肉がつることもあります。筋肉のけいれんは数秒でおさまることが多いですが、数分~数十分続く場合もあり、朝目覚めたときに筋肉痛が残っていたり、寝不足になったり、不快なものです。
こむら返りが起こる原因としてまず挙げられるのが筋肉の疲労です。サッカー選手が試合中にグラウンドに倒れ込み、チームメイトに足を伸ばしてもらっている姿を見たことがあるでしょう。アスリートですらこむら返りが起こるのですから、普段、筋肉を鍛えていない私たちが日中、少し無理をして運動したり作業した日の夜、こむら返りが起こることは十分ありえます。筋肉量が少なくなっている高齢者ではなおさらです。
脱水もこむら返りの危険因子です。これからの季節、屋外での運動、作業中はこまめに水分補給をしましょう。
こむら返りがきっかけで、慢性疾患が見つかることがあります。代表が糖尿病と肝硬変です。ともに無症状で経過することが多く、気づいた時にはかなり病状が進行していたということも少なくありません。筋肉疲労や脱水になるような覚えがないのに、夜間に足がつる方は、一度内科を受診してください。
日頃飲んでいるお薬の影響で足がつる場合もあります。心不全やむくみの治療薬の利尿剤、高脂血症治療薬のスタチン、喘息治療薬の気管支拡張剤などです。これらのお薬を定期服用している方でこむら返りがしばしば起こる場合は、主治医にご相談ください。
こむら返りを起こりにくくするために、日ごろからふくらはぎの筋肉を鍛えておきましょう。おすすめの運動がスクワットです。健康こぼれ話第3回、「筋肉は第二の肝臓」~筋肉を意識した日常生活を~、の中でご紹介しているとおり、10回1セットを一日2~3セット続けてください。
運動や筋肉を使った作業後、ハイヒールを長時間履いた後、などでは、ふくらはぎを伸ばすストレッチをしておくことが大切です。お風呂の中でふくらはぎをマッサージすることもこむら返りの予防に効果的です。
食事では、マグネシウムとカルシウム(乳製品、大豆、海藻類、魚介類など)、ビタミン、クエン酸(梅干し、レモン、お酢など)、を多く含む食品を意識してください。
それでもこむら返りが起こったときは、焦らずにつっている筋肉を伸ばしましょう。ふくらはぎがつったときは、足を伸ばして足指をつまみ、ゆっくりと手前にひっぱります。足の裏の筋肉のつりでも同様です。
多くの場合、数秒~十数秒でおさまりますが、数分間続くような方は、慢性疾患が隠れていないかをお医者さんに診てもらったうえで、漢方の芍薬甘草湯を処方してもらいましょう。即効性があり、飲むと数分でこむら返りがおさまります。枕元に1包おいておくと安心ですね。ただし長期連用すると、血圧上昇などの弊害が現れることがあります。肝硬変の方では、分枝鎖アミノ酸顆粒製剤やカルニチン製剤が使われることもあります。